K18 ダイヤモンドリング -アメリカに嫁ぐ前に
シンプルなリングに、一粒のダイヤ。
リングのウデの部分につや消しをかけて。
このリング、実は注文した方のお母さんとお揃い。
元々、ご両親が「アメリカに嫁ぐ娘に何か心に残るモノを…」
ということで、家に伝わる様々なジュエリーを、シンコーストゥディオにもって来てくださったことが始まり。
お父様が『日本伝来の組紐のブレスレットをつくりたい』というご希望と一緒に、
「古いリングだけど、どうしたらいいだろうか?」
と持ってきたのが、このリングのデザインの元になったモノ。
おそらく戦後すぐか、もっと前かもしれないそのリングを、サイズ直しをして、きれいに磨き、ウデにつや消しをかけました。
そして数か月経ち。
今度は、それをもらったお嬢様からのご連絡。
「おじいちゃんの古い純金らしきリングと、ダイヤのプチペンダント。これを使ってリングをつくれないでしょうか?」
「アメリカに行ってしまう前に、母にあげたいのです。」
そして、提案したのが、その純金リングを溶かして、銀と銅で割ることで、K18のリングにして、ペンダントのダイヤモンドをセッティングするデザイン。
まさに、ご両親からお嬢さんがいただいたリングと、似たデザインです。
今度は、少ししっかりと厚みをつけて、内側にはご両親の結婚記念日を彫入れました。
その後、途中段階を一度確認した後に、彼女はアメリカに出発していきました。
そして、完成。
取りに来たのは、また、最近ご結婚したばかりの弟夫婦。
母の日に、サプライズでそのリングを上げたそうです。
私たちが修理した家に伝わるリングと、おじいさまのリングを溶かしてつくったリング。
この二つのリングが日本とアメリカにある。
この、コロナの状況下、彼女はしばらく日本の家族に会うこともできないでしょう。
でも、同じ指輪をしている母が日本にいると思うと、少しだけ心強いかもしれません。
これから、この一族が歩む歴史とともに、ジュエリーがある。
感慨深く、この仕事の奥深さを感じるのでした。