組紐(くみひも)+ゴールド+和彫り+ダイヤモンドブレスレット ものづくりのあり方を考える
新し日本のものづくりのあり方について、
とても考えさせられる、意義のある仕事でした。
きっかけは、コロナ禍の中、うちのお店を探して来てくださったお客様。
「結婚されてアメリカに住むことになったお嬢さん、そしてそのパートナーへのプレゼントとして、組紐(くみひも)で記念になるプレゼントをつくりたい。」
というご要望からでした。
新しいモノをつくろうとするとき、そこに賛同してくれる「人」がいて、
そこからエネルギーのある、モノが出来上がると、改めて感じさせてくれる仕事でした。
4代続く伊賀の組紐屋
組紐は、伊賀の組紐屋さんとお仕事をさせていただいていましたが、今回は手組みの一点オリジナルで頼める人を探しました。
以前より親交のあった、伊賀市観光戦略課の川部さんという女性にFBで連絡を取りました。
彼女からの紹介されたのが、松島組紐店さんでした。
そして、松島組紐店4代目の松島康貴さんが、この仕事を引き受けてくれました。
まだ、20代の新進気鋭の、組紐職人であり、アーティストでもあります。
私たちの、期待を見事に乗り越えた組紐のバリエーションを提案してくれました。
一人のいい仕事が、お客様も、つくる私たちのモチベーションも上げるものです。
もっといいものをつくろうと、期待は裏切れないと、制作にかかわるみなが感じたと思います。
一方で、古い技術だけではありません。
今回の板のカットは、CNCというコンピューター制御の切削機を使っています。
2枚を完全に同じ形にカットすることができ、その後の金属を加工するクラフトマン内田岳志の仕事もスムーズでした。
その板を、腕に沿うようにカーブをつけます。
その後、イニシャルとダイヤの石留は、和彫りの職人(エングレーバー)の宮本輝美が施しました。
ダイヤモンドは、ご依頼いただいたお客様の奥様のリングから外したものです。
ダイヤモンドは母から娘とそのパートナーへが引き継がれていきます。
石留と名前の彫は、鏨(たがね)と小づちを使った、日本ならではの繊細な仕事です。
顕微鏡を使って仕事をします。
彫と石留、仕上げが終わると、出来上がった板に、直に組紐を組んでいきます。
そして最後に、ブレスレットに金具をつけます。
これにはかなり気を使ったようです、せっかく組んだ組紐が汚れてはいけません。
金属と組紐という異質なものを、どうつなげるか?どのように上質感を失わないようにつくり上げるか。
異質な素材を合わせる新しいモノをつくりだす時に、ぶつかる壁でしょう。
今回は、松島さんの協力もあり、練習用組紐をわざわざ組んでくれました。
最終的にレーザー溶接機を使い、中で金の芯を通して頑丈に留めることができました。
人との関わりのなかで、新しいデザインとモノが生まれる
シンコーストゥディオのデザイン→CNCカット技術者→金属加工ジュエリークラフトマン→エングレーバー→組紐制作者→クラフトマン→完成。
今回は実に4人の職人たちが仕事に関わってくれました。
その場所も、東京→新潟→伊賀→愛媛、日本の半分をめぐっています。
レベルが高い仕事は、ほかの制作者のモチベーションも上げていき、最終的に、挑戦的なあたらしいモノが生まれます。
そして、何よりご注文いただいた、お客様こそ、とても大切なキーマンです。
言い出しっぺであり、こういう仕事を理解し、価値を認め、お金を払ってくださる。
その、感性には脱帽。
コロナの拡大にともなってご結婚されるお二人の、結婚式など、諸々のことが先延ばしになってしまっています。
それは、本当に残念です。
でも、私たち仕事に携わった人間一人ひとりが、この仕事を忘れないでしょう。
モノには、頼んだ人、つくった人の魂が宿って出来上がっていくと思うのです。
多くの贈る言葉よりも、真摯に仕事に取り組むことで、けれど静かにお二人を祝福します。
人との関わりのなかで、新しいデザインとモノが生まれる。
ものづくりは、デザインするとは、究極「人がつながる」ということだと、確信しました。