Pt900 ヒスイリング おもしろい石の形にときめく
お母さまから譲り受けたヒスイは、その昔の帯留めをいくつかにカットした一部でした。
高さもあって、微妙な角度。
この石をお持ちになられたとき、「なんておもしろい石なのだろう!」
ときめきのようなものが、私たちにはありました。
さらに、お客様とお話していくうちに、ご自分の持つモノへの考え方がちゃんと確立している方だなと、感じ取ることができました。
おもしろいデザインを提案したら、きっと一緒に楽しんでくださるだろう。
そんな勝手な想像で、思い切ったデザインを提案。
3種類ほど提案した中で、私たちも、クラフトマンも、制作は大変だけれど挑戦してみたいと思っていた、このデザインに決めていただきました。
曲線的なラインだったら、通常はワックスというもので原型をつくって制作するのが一般的。
今回このリングは、地金(プラチナ)でしっかり石を留めるためには、
わずかな隙間もないように、きっちりと石と地金が合わなければいけません。
そのために、誤差の少ない金属から、じかにつくっていく方法をとりました。
金属から、曲線を出していくのは、かなり技術が必要です。
また、リングの上の方が重いと、バランスが悪く、回りやすいので、リングの上の方の両サイドを「打ち出し」という技法を使って中を空洞にしました。
石留は、上からプラチナの板パーツをろう付けし、しっかり留めました。
表面には、少し粗目のテクスチャーを。
美しいグリーンととても相性がいい。
こういった、おもしろい仕事をさせていただけることに、感謝しかありません。
「他人はそうだろうけれど、私はこう思う。自分で考える、自分で選ぶ。」
そういうお客様の価値観が、私たちのデザインに、日々つながっていると感じます。
そして、明らかに、そういう感性を持った人々が増えているのも事実でしょう。
だからこそ、
つける人の生活を想像し、考え、人生にリンクさせていけるか。
向き合っていけるか。
ジュエリーをつくる私たちに、今、必要とされている力だと感じるのです。