K18 縞メノウリング 丸く、やさしく
その人は、たまたまお店お前を通りかかった。
そして、お店の前で立ち止まり、そこにこちらから声をおかけしたのが始まりでした。
聞けば、お母さん、お父さんが亡くなって、長崎の実家を整理し、いくつかのジュエリーが出て来たということ言います。
このジュエリーたちをどうにか、身に着けられるようにしたいというご希望でした。
ジュエリーって、やっぱり不思議なんですね。
一つずつのジュエリーのことを人が語るときに、それを生前、身に着けていた人たちが「こんな人だったんじゃないかな?」
っていう想像が膨らむ。
きっとこのオレンジの縞めのうには、こういう柔らかなテクスチャーが合うだろうと思いました。
今回身に着けるお客様は、とってもやさしくて、温かい感じの方。
なので、「丸み」がイメージでした。
丸く、やさしく。
金属はあたたかく。
石座の下も、丸くしました。
人の死は、一般的には肉体が活動を停止することだけれど、引き継いだジュエリーを身に着けることで人の心の中に生き続ける。
この仕事をしていると、時々「生」と「死」の概念を、考えてしまう。
ジュエリーをつくるという仕事は、そういう事を考え続けていくことなのかもしれない。