うちの彫りの仕事をしている宮本から、「深沢やすり」が廃業するという連絡がありました。
まだ在庫がいっぱいあるので、買いたい人は来てということらしい。
このやすり屋、すべて手で目を立てていた。
http://www.ntv.co.jp/burari/021214/info04.html
色々な職人の注文にも答えて、たとえば左利き用のやすりなどもつくってくれていたようで、ジュエリー業界でもずっとここにヤスリをお願いしてきた人も多いようでした。
結局、跡を継ぐ人がいための廃業です。
最近、立て続けに廃業のお知らせが入ってきます。
私の祖父は大工の棟梁。
父は時計技師から、お店を始めた。
だから、私が子供の頃から、工具というのはかなり身近なものでした。
朝仕事に行く前に、祖父が「かんな」や「のみ」などの歯を研いでいた。
一緒に家の包丁も研ぐので、包丁はさぞかしいつも切れ味がよかっただろうなと思う。
鏨(たがね)
工具はすべての仕事の始まりであり、終わり
また、シンコーストゥディオのオリジナルのジュエリーをつくる基礎をつくってくれた、クラフトマンも、水戸藩の刀剣金工士の家系に伝わる江戸時代からの1,000本近い鏨(たがね)を、毎日少しずつ研いで、手を入れていました。
とにかく、工具はすべての仕事の始まりであり、終わりである。
特に、和彫りの彫などは、鏨の先をどのようにつくるかによって、様々な表情や色々な形を生み出す。
常に、工具はすぐに使えるように手入れされていなければならない。
日々、製作現場に出入りし、職人と話しているうちに、工具に対するモノづくりをする人の感覚を、肌で感じて来ました。
やっとこ、ピンセット
工具ってなんだろう
工具=道具は生き物の中で、人間だけが持つことができた特権。
手の延長なのかも知れない。
工具を見るとき、その中に人の魂、そういうものが宿っているような気がする。
一般の人では、計り知れないほどの高度な技が、この工具たちを通して生まれる。
日本の仕事のこれから
日本の仕事は、モノ自体だけではなく、モノづくりを下支えしている工具の職人の消滅で、さらに加速するのだと、実感しました。
「日本の仕事」は、もうかなり消滅している。
それを肝に銘じつつ、新しいモノづくりの形と、アイデンティティとしての日本の仕事をどうやってに引き継いでいくか。
その価値が一般の人たちの日々の生活の幸福感につながるように、していくか。
魂のこもった工具とともに、考えていきたいと思います。
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