SHINKO STUDIO | ジュエリーリフォーム&デザイン東京 – シンコーストゥディオ

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MENTOSEN
デザインとものづくり - 人とデジタルの関係を考える

クリエイターズセッションナイト#1-2(後半) コロナの時代に考える-不要不急のモノってなんだろう?

ゲスト:コンテンポラリージュエリーアーティスト 松浦峰理さん YouTube配信
https://youtu.be/k6iCDWolcLU (約20分)

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クリエイターズセッションナイト#1-1(前半) コロナの時代に考える-不要不急のモノってなんだろう?コンテンポラリージュエリー・アーティスト松浦峰里


「不要不急の外出は避ける。」

そういう生活をしてみて、私たちは初めて「不要不急のモノやコト」こそが、まさに「人間らしい」尺度だったということを実感しました。
また都市に通勤するスタイルから、生活する場所でリモートワークをするスタイルが出来上がりました。

この先「人間らしく」生きていくために、まさに「不要不急」のジュエリーが、これからどんな役割を担っていけばいいのか、海外のコンペティションで多くのアワードを獲得している、コンテンポラリージュエリー・アーティストの松浦峰里さんとシンコーストゥディオの米井との対談の後半。Zoomでのディスカッションをお届けします。

まさに、不要不急な人間たちの密なお話です。

人とつながる、挑戦していくことで生まれるモノの価値

米井:ジュエリーは、まさに「不要不急」のモノと言われるので、今のような緊急時に『「不要不急」と言われると、自分のことを言われているようで、ズキンと心が痛む。」』というお話をしてましたね。

けれど一方で、コロナの自粛生活を強いられる中で、実は「不要不急」のモノこそが、人を形作っている、そういうことが、みんなが分かってきたんじゃないかっていう話にもなりましたね。

反対に「不要不急ではないモノ」のことを考えたとき、

それはやっぱり、人とのつながりが大切なんじゃないかなって思うんです。

シンコーストゥディオというお店は地域の人たちが結構集まります。

働いてる女性が集まってきてくれたりするんですね。

彼女たちは結構国際的な仕事をしていたり、海外によく行ったりしているんです。

けれども、一方で「地域」っていうものにとても魅力を感じているようです。

松浦さんも、コンテンポラリージュエリーの海外へのアーティスティックな仕事とは別に、お客様からのオーダーを受ける仕事もしていますね。

松浦:そうですねお客様のオーダーもお受けしています。

直接お会いして、じっくりお話しして相談という感じなんです。

お客様によっては本当に3時間ぐらい、お茶を飲みながら話したりします。

元々、その方とは面識があったわけではないのですが、人生の深いところまでなぜか教えていただいてしまう、という不思議なことがあります。

そういったきっかけがあるからこそ、この方のためにどういう風につくるかっていうイメージも固まってきます。

人と直接ダイレクトに話しをするって、とても大切だなと思ってます。

 

米井:オーダーやリフォームなどを受ける時って、その方にとって人生の転換点だったりするわけですよね。

 

松浦:要望を色々言って頂いてから、こうしたらすごく本人の希望の通りになるだろうと、本人の要望に沿う形のデザインを起こすこともありす。

お客様が求めていることに応える、「その最善の解決方法は何かな」っていうことは常に考えます。

 

米井:そうですね、顔が見える人に対しての仕事って、違ってくると思います。

私は、実際に直接金属の制作はできないので、デザインをします。

 

実際にクラフトマンや制作に関わる人たちに、オーダーする方の気持ちを伝えていかなきゃいけない。

つける人とつくる人の距離をいかに縮めていくか、それが一番の課題です。

 

お客様に出来上がったモノの感想を書いてもらうんですけど、それは必ずそのクラフトマンのために書いてもらえるようにしています。

そして、デザインも含めて、つくる側がどれだけ新しいことに挑戦しているか、想像力とか技術とかそういったものを、注ぎ込んで、身に着ける人のことを、どれだけ考えてくれたか。

そういうところに、買う側の方は、価値を感じてくれるのではないかと思っています。

その価値をきちんと伝えて、身に着ける人が、気持ちよくお金を出してもらえるかっていうのは、売る側やつくる側の努力が必要だと考えています。

 

松浦:そうですね、これだけ3 D プリンターやCADなど、色々な新しい技術が出てきていますね。

ジュエリーをつくるときに、そういう新しい技術も踏まえていかなければいけません。

そうしないと「実験的なんだけれども現実的なモノ」というものが、なかなか出来てこないという気はしますね。

地域というコミュニティ

米井:最近ちょっと感じるのは「地域」っていうのがまたちょっと変わって来ている。

地域って言い方が正しいのかどうか分からないのですけれど、

そのコミュニティっていうのでしょうか、違ってきてるのかなって感じています。

 

うちは海外から、直接お客様から注文もらったりすることがあるんです。

このコロナの時期になってからも、イギリスやオーストラリアから注文があったり、カナダのへのオーダーを送ったりしたのです。

 

彼らとは、メールや SNS でかなり対話をするんですね。

例えばシルバーの含有量とか、割金にプラチナを入れられないかなど、要望があれば、とりあえず全部調べて応えてあげるんです。

 

基本は街の宝石屋のおばちゃんっていうのが、私にはしっくりくる。

注文する方が、聞きたいと思ってることはなるべく答えます。

彼らがつくりたいと思ってるモノがあれば、「一緒に考えてつくっていこう!」という感じでデザインを起こしてデータを送ったりします。

 

不思議なのは、外国の方でも、地域で近くにいるお客様と、とても感覚が似ていることですね。

つくってる人のことをとても、尊重してくれるんです。

 

コロナの前は、グローバリゼーションというのでしょうか、色々な人やモノが国を超えて行き来していました。

けれど、コロナになってみたら、国ごとに閉鎖して非常に分断された感じがありましたね。

グローバリゼーションの限界って言われているけれども、実はこの人と人の繋がりというのは、経済とかそういうことではなくて、直接繋がることによって、「もっと分かり合える」という気持ちがとてもしてしまうわけです。

人と人との近い関わり方を、模索していく必要があると思います。

 

松浦:人同士が交流することは、すごくは重要だなと思っているんです。

私もこのコロナの期間も、外国とのやり取りが結構ありました。

5月末からの展覧会が上海であり、出品依頼があって作品を送ったりしました。

 

これは海外のコンペにトライし始めてから感じたことなんですけど。

 Facebook のメッセンジャー使ったり、メールもそうなんですけど、ネットを使って色々なことが瞬時にできるようになってしまった。

 

なのである意味、あまり会わない日本に住んでる人より、海外にいる人が近く感じてしまったりすることもあったりします。

注意しているのは、意識して、海外の方にはかなり早く返信するようにしています。

距離が離れているので、「意識がそっちに行ってるよ」ということを、感じてもらえるように注意しています。

そうすることで、相手との距離感が近くなって、文面から人となりを読み取れたりするんですね。

ニューヨークの展覧会のことで、コンテンポラリージュエリーのギャラリスト、シャロン・クランセンさんが、「いまアメリカの状況はよくないが、私も展覧会を開催できるように、色々トライしてみているから、もう少しまってくれ」というようなメールをもらって、

世界中でジュエリーに関わる人たちが、コロナをなるべくいい方向に持っていこうとしている、ということが感じられて、すごくよかったと思います。

 

米井:ジュエリーに限らずですが、モノづくりに関わる人間たちが、声高に何か言うわけではないけれど、モノに語らせると言うか、

「こういう社会にして行きたい」っていう、やっぱり信念みたいなものがちょっと欲しいなって思ってます。

アートの世界の方は、皆さん結構強い意識を持っていらっしゃると思うんです。


松浦:
私の場合は、母親も絵を描いていた環境で育ちました。

アートは、同じものを表現するにしても答えが一つじゃない。色んなものがあってよくて、それぞれによくて…って

そういうことがやっぱり重要なことだと思っています。

 

だからこそ、個々が、1人1人が本当に大切だよっていうことを語っていると思うんですね。

やっぱり多様性ってすごく大事だよっていうことを、伝えている。

 

グローバル化の中で、多様性が大事だよということになってくると、日本人が持ってる歴史とか文化、アートや工芸などのバックグラウンド。

それがすごく重要になってくると思います。

作品でも、自分なりのバックグラウンドを伝えられたらいいなと思って、作品をつくっています。

 

米井:そうですね。

私たちは、ジュエリーを通してしかできないんですけれども。

もっと丁寧に表現して行けたらいいなと思いますし、やっぱりそこに「人」っていうのがいるって言うことを忘れないで、ものづくりがしたいなってすごく思うんですよね。

 

一方で、ジュエリーがお金持ちしか買えないという事にとても引け目を感じてるんです。

けれども、素材価値を下げたり、仕事のレベルを下げていいかといえば、またそういうことも違うと思います。

きちんとした長く使えて、手入れができるモノをつくっていきたいと思います。

人の創造性とか技術とか、そういうものの上に出来上がるモノは、人にとって幸せなのかなと信じつつ仕事をしたいと考えています。

 

 アートって一般の人には、とっつきにくいと思うのですが、コンテンポラリージュエリーはわかりやすいと思います。

 

松浦:Artなのに身につけられて、楽しめるっていうところがやっぱり本当にお得(笑)

そしてその素材が、高価でお金持ちしか買えない、というものじゃないわけですね。

そして、身につけた時にその人の人生の中で共鳴できるものとして、それは本当の意味でその人にとって大切なものになると思います。

すごく、そのことがいいなと思います。

日々の生活が楽しくなるかなと思いますね。

米井:また、少し落ち着いたらお店の方にも来て頂いてリアルで、クリエイターズセッションナイトに参加をしていただけたらと思います。

今日はありがとうございました。

(2020.5.22収録) 

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松浦 峰里(Mineri Matsuura)

松浦峰里(まつうらみねり) コンテンポラリージュエリー・アーティスト

<海外受賞等>
2020年 Gioielli in Fermento(ジオイエッリ・イン・フェルメント)
2019年 Alliages Legacy Award (アリエイジス・レガシー)テクニーク賞 (フランス)
2019年 Gioielli in Fermento 2019 Klimt02特別賞/AGC 特別賞(イタリア)
2018年 Comineli Foundation Award(コミネリ・ファンデーション) Seconda menzione (イタリア)
Gioielli in ferment(イタリア・2017)/ 2016(Italy, Spain, NY, SOFA Chicago)

<作品収蔵>
Espace Solidor 美術館、カンヌ、フランス

<海外エキジビション等>
2019年 Gioielli in Fermento イタリア、リボルノ
Espace Solidor(エスペイス・ソルダー)美術館Legacy Award 展覧会 フランス、カンヌ
Alla ricerca della qualitàイタリア、ピアチェンツァ
ウェブサイト http://mineri-matsuura.com/

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