- 2020.05.25
- クリエイターズセッションナイト
ゲスト:コンテンポラリージュエリーアーティスト 松浦峰理さん YouTube配信
https://youtu.be/GF6dZKP9Zpk (約20分)
クリエイターズセッションナイト#1-1(前半) コロナの時代に考える-不要不急のモノってなんだろう?コンテンポラリージュエリー・アーティスト松浦峰里
「不要不急の外出は避ける。」
そういう生活をしてみて、私たちは初めて「不要不急のモノやコト」こそが、まさに「人間らしい」尺度だったということを実感しました。
また都市に通勤するスタイルから、生活する場所でリモートワークをするスタイルが出来上がりました。
この先「人間らしく」生きていくために、まさに「不要不急」のジュエリーが、これからどんな役割を担っていけばいいのか、海外のコンペティションで多くのアワードを獲得している、コンテンポラリージュエリー・アーティストの松浦峰里さんとシンコーストゥディオの米井との対談。ZOOMでのディスカッションをお届けします。
まさに、不要不急な人間たちの密なお話です。
コンテンポラリージュエリーとは
米井:今日は コンテンポラリージュエリーアーティストの松浦峰里さんをお呼びして「コロナの時代に考える-不要不急のものってなんだろう」というテーマでお話ししてみたいと思います。
松浦さんはコンテンポラリージュエリーというアートとしてのジュエリーをやってらっしゃって、ここ3年間、海外のアワードを次々ととっていらしゃっていますね。まず、コンテンポラリージュエリーというものは、どういったものか少し説明していただいていいですか?
松浦:ざっと言いますと、ジュエリーの分野の一つで、素材に制約を受けない現代美術のジュエリー版のようなものとして捉えていただければいいのかなと思います。より作家の意図と言うか思想というものが、作品に反映されます。
Mineri Matsuura: Silver Pendant
米井:面白いですね。
Mineri Mtsuura: Wood Silver Broach 日伊コンテンポラリージュエリー展-Dialogue
松浦:
今までのジュエリーは、時の権力者が貴重な宝石や貴金属を象徴的に身に付けるという使い方だったと思うんです。
でも今の時代では「本当に自分が大切なモノを身につける」ということがより重要になったと思います。
そういうのを反映していったのが、コンテンポラリージュエリーだと思います。
Mineri Matsuura: Silver Broach “Metamorphosis” TECHNIQUE prize of ALLIAGES Legacy award
米井:今回松浦さんとお話したいなと思ったのは、今回のコロナの問題が広がってから、「不要不急」っていう言葉がとっても多かったと思います。
特にジュエリーっていらないモノ、まさに「不要不急」と言われますし、実際そう思います。
その辺は、峰里さんはどのように感じていますか。
Mineri Matsuura :Silver Broach 2020日本ジュエリー展 奨励賞受賞
松浦:「不要不急」って言われるたびにちょっと心がズキンとする。
自分のことを言われているようで。
自分自身が、ほとんどの全てが不要不急でできているんです。
実際作品を作ってる時間よりぼーっとして考えてる時間が、結局、何か新しいことを思いつくきっかけになったりするんです。
一般的には「不要不急のモノ」って言われることが、自分の中では「不要不急じゃない」って思ってます。
散歩に行くこともそうですし、反対に家の中でほとんど一日中引きこもっていたりします。
でも引きこもっていることが不要だとは言われない。
「不要不急」を自分以外の誰かに判断されるって言うのは、ちょっとイヤですね。
皆さんそうだと思うのですが、自分にとって大切なことは、あの人にとっても大切なことではなかったりね。
やっぱり、人によって違う、そういうのを認め合える寛容な社会であって欲しいなと思います。
言葉ではない、直接的なコミュニケーションが、ものすごいエネルギーをもたらす
米井:ここ数年モノはいらないっていう風潮がとてもあったと思うんですよね。
何故かって言うと、大量生産大量消費つくられてきたモノが、実は無くても結構、幸福だよねっていうのが分かっちゃったと言うか、そういうのがあったと思うんです。
でも、このコロナのことで、全てのモノがいらないっていうわけじゃないんだ…
「不要不急」のモノこそが実は人間らしい指標の一つだったんだって、皆が気付いて来たのではないかって思っているんです。
松浦:今、手仕事の方に急激に戻ってきているように思います。今回のことで、本当にいいモノとか大切なモノっていう価値が、すごくはっきりしたんじゃないかなと思いますね。
米井:
本当に大切なモノっていうのは、どういうところが基準だと思いますか。
松浦:
私は普段からいつも、「自分がやってることが、人にとって大切で あったらいいな」と思ってつくっています。
ドイツの文化大蔵大臣のグリュッタースさんが「芸術文化は政府の最優先事項であり、アーティストは生命維持に必要。特に今は。」と話していました。
「なぜ生命維持に必要なのか」って思うじゃないですか。
実は、私、1400年ぐらいに書かれた世阿弥の「風姿花伝(ふうしかでん)」を、今ちょうど勉強しているのですが、
風姿花伝の「花」とは何かというと、それは演者が纏(まと)う空気感だそうです。
そして「人間の言葉で捕らえられない、カタチのないモノだけど、感じることができるモノ」それがとても大切なモノだと風姿花伝では言っているんです。
「風姿花伝」の中の「花」っていうものは退屈ではない。
そして、常に変化する。
常に変化するから、見る人がとても面白いと感じて、珍しいと感じて、そして興味関心を持ってくださって、そしてそれが人の心を動かす。
「花」は、モノをつくっている自分自身ではなくて、相手の心の中にある。
相手の心がそれをどう感じたか、それを「花」と認めた相手の心が大切なモノっていうこと。
ドイツの文化大臣のグリュッタースさんの言葉と「風姿花伝」を重ね合わせたときに、思ったことです。
最終的には「言葉ではない、直接的なコミュニケーション」が人にものすごく、エネルギーをもたらすじゃないかなって思っています。
米井:この「クリエーターズセッションナイト」っていうこのイベントは、本来はお店で実施していて「つかう人、つくる人、あるいは売る人をどうやって繋いでいったら、一番幸福なんだろうなっていうのがテーマなんです、
そういった人とモノとの関わりは、また後半でお話していきたいと思います。
後半の「クリエイターズセッションナイト#1-2(後半) コロナの時代に考える-不要不急のモノってなんだろう?」を見たい方は
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松浦峰里(まつうらみねり) コンテンポラリージュエリー・アーティスト
<海外受賞等>
2020年 Gioielli in Fermento(ジオイエッリ・イン・フェルメント)
2019年 Alliages Legacy Award (アリエイジス・レガシー)テクニーク賞 (フランス)
2019年 Gioielli in Fermento 2019 Klimt02特別賞/AGC 特別賞(イタリア)
2018年 Comineli Foundation Award(コミネリ・ファンデーション) Seconda menzione (イタリア)
Gioielli in ferment(イタリア・2017)/ 2016(Italy, Spain, NY, SOFA Chicago)
<作品収蔵>
Espace Solidor 美術館、カンヌ、フランス
<海外エキジビション等>
2019年 Gioielli in Fermento イタリア、リボルノ
Espace Solidor(エスペイス・ソルダー)美術館Legacy Award 展覧会 フランス、カンヌ
Alla ricerca della qualitàイタリア、ピアチェンツァ
ウェブサイト http://mineri-matsuura.com/