先日紹介させていただいた、ひすいの猿をお持ちのお客様が刀のつば(鍔)を持って来てくださった。
鉄に、金の象嵌(ぞうがん)そして和彫り。
菖蒲の花が、たぶん水の中にしぶきのようなものが表現されている。
さらに、木道のようなものがあって、空には雲が浮かんでいる。
もしかしたら、江戸時代後期、堀切菖蒲園に菖蒲を見に行くのが流行ったというから、その景色かもしれない。
一つの鍔にこれだけの景色が詰め込まれているなんて驚きです。
銘が彫ってあるのをみつけられず作者は不明。
それにしても、波と雲のデザインがなんとも独創的。
今のグラフィックデザインなどにも、とても落とし込みやすい感じがします。
こちらは銘がはっきり彫ってあって、武州住正義の作。
「なす」です。
西洋の刀に、なすのデザインを用いることはまずないでしょう。
この、日本人的なウィットに飛んだ意匠がなんともたまらなく嬉しくなる、楽しくなる。
三つのなすのうち、一つは透かしで表現しそこに、へたが表現されている。
切り抜いただけだけれど、その他のナスとの対比で、その透かしがなすだということがわかってしまう。
少々調べてみると、この武州住 正義は透かしが得意だったようで、様々な透かしの鍔をつくっていたようです。
たぶん、元々はなすの青い部分は、青金と呼ばれる日本独自の色金(いろがね)と呼ばれる色つきの金属だったのではなかろうか?
そんなことも考えたりしていると、やっぱり魂をこめてつくられたモノは時代を越えて私たちの心を動かす。
200年近く前のモノを見ながらな幸せな気持ちになるのでした。
モノの役割は、本来こんなちょっとしたことなのである。
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