三塚貴仁 若手ジュエリー・アーティストを通して「モノ」の意味を考える
ISETAN JAPAN SENSES 期間中に開催される
『人』から始まる、日本のものづくり『 JEWELRY & LIFE 』 2018.10/31(水)~11/13(火)
伊勢丹新宿店メンズ館1階=メンズアクセサリー 三塚貴仁 会期 2018.11/7(水)~11/13(火)
若手に活躍する場を与え、生活に新しい価値を提案する2017年に始まったプロジェクト。
身に着けることで、アートが「LIFE(生活)」に溶け込む。若手コンテンポラリー・ジュエリーアーティストたちが「JEWELRY(ジュエリー)」だからできる、新しい価値の提案をするプロジェクトです。
会期中は、彼らのアートとしての作品。そして普段の生活にも寄り添えるデザインよりのジュエリーを展示販売いたします。
参加若手アーティスト達と話をしていると、積極的に人と関わっていこう、つながっていこうという気概を感じる。それは今までのアートの世界では、あまり無かったことかもしれない。アートが個人的な意思表明、デザインが社会の問題を解決していくものだとしたら、彼らはその両方を行き来できる気がする。
こういうアーティストが育っていくことが、何となく嬉しい。
参加アーティストは武蔵野美術大学出身の、稲井つばさ、ささきさとし、東京芸大大学院の三塚貴仁(みつかたかひと)、波夛野千尋(はたのちひろ)の4人です。今回は、三塚貴仁とのトークセッションを掲載します。
三塚貴仁 みつかたかひと
東京芸術大学大学院在学中。ジュエリー工房を営む両親の元に育つ。近年、アートジュエリー展での入選の活躍が目覚しく新たな技術にも常に挑戦している。ウェブサイト: Mitsuka Instagram: takahito_mitsuka
2017年 『砕けた石』 ネックレス SV
「ジュエリーを食べて生きている」という感覚
三塚:
両親は宝飾品のデザイン・制作を仕事にしていました。
ですから、子供の頃から「ジュエリーを食べて生きている」という間接的ながらもそういった感覚がありました。
米井:
おもしろい感覚ですね。
三塚:
人が喜ぶ作品をつくってお金を得て、それで生活をする。
単純にそれってすごいことだなあと思い、中学3年の時には将来はジュエリーに関わる仕事をして生きていこうと決めていました。
その当時は、アートがメインな興味ではなかったです。どちらかというと、一人一人にむけたオーダーメイドのジュエリーをつくりたいと思っています。
東京芸術大学の大学生へと進学し、様々な作家と作品に出会いました。
そこが分岐点でジュエリーの表現のアウトプットのひとつにあるアートの要素を含むコンテンポラリージュエリーの制作へとむかえた気がしています。
価値感は人の数だけみな違う
三塚:
コンテポラリーな作品やコマーシャルな作品に限らず、ジュエリーの価値というのは、高額なダイヤモンドがセットされているからといって全ての人に価値があるとは限らない。
たとえば、安価な素材で作られたものであっても、愛する人が贈ってくれたものは、作品の価値だけではなく送ってあげたいという気持ちという代えられない価値もありますよね。
米井:
人によって、何に価値があるかは違ってくると。
三塚:
人の価値感は人の数だけ違う。だからこそ多くの人に向けて無難なジュエリーをつくるより、共感してくれる人に向けて質の高い作品を制作していくことの方が有意義だと感じます。
2018年『折り』 ブローチ SV
「こうあるべき」という主張はしない
三塚:
私には、ジュエリーはこうあるべきという主張はありません。
数学者の岡潔の言葉に
「私は数学者なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレ はただスミレのように咲けばよいのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えて来た」という言葉があります。
この考え方が自分にとって謙虚で誠実なものだと思っています。
米井:
主張が無いと言い切れるのは、むしろ勇気が要りますよね。
リング SV- 圧をかけることで、ユニークカツ緻密な模様を転写の技法。様々なデザインから選べる。
三塚:
何かを主張するということは、それ以外を認めないということだと思うんです。アーティストとしては作品の主張が弱くなると認識しつつも、今の自分としてはどんな人間でも持ち得る個の多様性を大切にしていきたいと言う気持ちがより勝っている状況です。
米井:
けれども、むしろ主張しないということは、強烈な独自性でもありますね。
Mitsuka-最小単位である一人の人への結びつき
米井:
今回、三塚さんの正式にブランドとして『Mitsuka』を立ち上げましたが、どんなブランドにしていきたいと思っていますか。
三塚:
ブランドとは個性や価値観であったり、生活スタイルやモード、もっと言うなら欠点をもはらんだものだと思っています。つまり、これは人と同じです。
そこで『Mitsuka』というブランドは、最小単位である一人の人への結びつきを大切にしたブランドにしたいと思っています。
これからも表現や技術、ブランドとしてより質の高いものになっていくようにアップデートできればと思っています。
ジュエリーとは- 一個人に向けた贈り物
米井:
三塚さんにとって「ジュエリーとは」と聞かれたら何と答えますか。
三塚:
「一個人に向けた贈り物」だと思っています。
コンテンポラリーなジュエリーをデザインする時は他の分野のアートと違うのは「つける人」と「つくる人」の関係性です。
そこは常に頭にあると思います。
米井:
通常、アートというと「つける人」を意識するということはあまりないですよね。
今回の伊勢丹の『JEWELRY & LIFE』で、非常に興味深いのは、参加若手のアーティスト達がアートとしてのジュエリーとデザインとしてのジュエリーを、自由に、壁をつくること無く行き来していることだと思います。
三塚さんのジュエリーに対する向き合い方には、常に「人」がそこにいるんですね。そういうジュエリーの捉え方は、特にコンテンポラリージュエリーの道の人には珍しく。非常に新鮮でした。
【三塚貴仁- みつかたかとし】
1993 東京に生まれ
2013 東京芸術大学美術学部工芸科 入学
2015 東京銀器会長賞受賞
2016 日本ジュエリーアート展 入選
2017 東京芸芸術大学大学院美術研究科 入学 伊丹国際クラフト展 入選
2018 在サンフランシスコ日本国総領事館 グループ展 出展 日本ジュエリーアート展 入選 銀座のばなグループ展
2019 東京芸術大学大学院在学
ウェブサイト: Mitsuka Instagram: takahito_mitsuka
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