ジュエリー修理は世界共通
オリジナルジュエリーを造っている身としては、もう少しジュエリーの修理について語っておく必要があるだろう。
金やプラチナ、少なくともめっきのかかっていないシルバーまでは、一般の人が見たら新品になったぐらいのレベルで修理や仕上げが可能です。しかも、ジュエリーの凄いところは、そのノウハウがほぼ世界で共通であり、どこでも修理が可能であるということ。(技巧的レベルが高いもの、特殊なものなどは除く。)
ジュエリーは「高い。」というけれど、それにはそれなりの理由があるのです。
たとえば、金やプラチナを「ろう付け」という溶接をする場合も少し融点の低い、やはり同じ金やプラチナを火で溶かして溶接をするのです。したがって、一般的にサイズ直しなどをしてもつなげたところはわかりません。
火の魅力
そして、金属の修理や加工は「火を使う」といういうところが、おそらくほかのものと違うと思います。
「ろう」を火を当てると、一瞬ぱっと光ってろうの珠が流れ出す。その一瞬の美しさ、感動はいつ見ていてもどきどきします。私はそんなに難しいろう付けはできないのですが、熱の伝導方向を考えて、ろうが流れ出す向きを計算に入れる。そしてそこに真っ赤な光った金属の珠がきちんと流れ込んだとき、そのろうは表面がぴかっと光る。
ですから、かなりクラフトマンは頭を使います。
ろう付けに限らず、ジュエリーの修理にはつくづく手順の組み立てや、科学的な根拠みたいなものが必要で、私がいつも優秀なクラフトマンと話していて思うのは、かなり理系よりの人が多いということ。
世界を渡り代々受け継がれるジュエリー
ジュエリーの修理を受けていると、歴史を肌で感じます。
100年以上前に、日本に渡ってきたであろう、フランスで造られたサファイヤとダイヤのアールヌーボー調のリング。
アメリカ人の駐在のお客様がお持ちになった150年ほど前のダイヤのリング。
祖先はオーストラリアからアメリカに渡った移民だったようです。
ジュエリーは小さくてそれでいて高価しかも身に着けるものなので、どんなに国を渡っても、その人の歴史とともに歩んでいるのです。
ジュエリーの修理やリフォームを大切な仕事だと思う
だからこそ、ジュエリーの修理、オーダーやリフォームという仕事も、ジュエリーというものの本質を追及する大切な仕事だとシンコーストゥディオでは考えています。「想いを受け継ぐ、ともに人生を歩む。」それが本来のジュエリーの役割だと思うのです。
そうでなければきっと私は、この仕事をしていないかもしれません。
昔から引き継いでいるジュエリーをその深い想いとともに、修理によって復活させてあげる、あるいはリフォームによって鋭い感覚のデザインとともに新しい息吹を吹き込んであげる。そして、日々お客様が身につけられるように。
それは、その方にとってはまるでお守りのようであり、それでいてクールにかっこいい、ジュエリーでなければありえない立ち位置のものなのです。
ジュエリーの修理心をこめて致します。
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