ジュエリーは工芸品ではないから
日本の「伝統技法」というと、正直あまりデザイン性を感じない言葉だ。
それは、今まで工芸の世界がつくりだして来たイメージがあまりよくなかったせいもあるし、工芸とファッションは今まで近くて遠い存在だった。
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金属工芸に使われてきた、象嵌(ぞうがん)や蒔絵(まきえ)、和彫り、等々日本の伝統工芸の中でも聞いたことあるけれど、一体なに?というのが一般の人の感想ではないでしょうか?
ところが、これが知れば知るほど美しく深い。
そして、ジュエリーはメタルワークの一種であるので、色々伝統技法を使うことによって、実は相当クールに、そして深みを持ったものが出来上がるのです。
しかし、そこで間違えたくないのが、やっぱりジュエリーは工芸品や技術の結晶という以前に、日々身につけてファッションを楽しむものだということ。
和彫りの面白さ、実用性
私が一番、今のジュエリーに取り入れやすく、普段も使いやすく美しいと感じているのは鏨(たがね)と小槌(こづち)を使った「和彫り」と呼ばれる彫りの技術。
これが、またキラキラと光って美しい。
そこで、ジュエリーに和彫りを落とし込んでいくときの工程について説明しておこうと思います。
和彫りの工程
1.彫りの文様をデザインする
古典的な文様とはいうものの、何百年も歴史を経て生き残っているものなので、それをシンコーストゥディオ風にアレンジして描き上げることもあり、また、全く新しい彫りの文様に挑戦することもあります。
2.彫り職人と打ち合わせ
紙の上では描けても実際の彫りは立体造形。
深く力強く彫る線、浅く繊細に彫る線、そういった強弱があって初めて、生き生きした絵が浮かび上がってきます。
銅板などに、何度も試作の彫りをすることもあり彫り柄がピタッとはまるまではとても時間がかかります。
3.実際の製品に下絵を描き、ヤニ床などに固定。
ヤニ床は職人が使いやすいように色々と工夫してつくっています。
写真のヤニ床も彫り職人の自作。
4.彫り
鏨(たがね)と小槌(こづち)を使って彫っていくのが和彫りの特徴。ハワイアンジュエリーなどの洋彫りは小槌を使いません。
ここで大事なポイントは、彫りに入る前に絵柄が彫りやすいように鏨の先を彫る柄に合わせて一本一本作っていくこと。
実は、この鏨がつくれるかどうかが和彫りは命です。
それによって、柔らかい線、カチッとした硬い線、色々な線や模様を出していくことが可能なのです。
職人の仕事は入念な準備が必要です。
そして初めて鏨と小槌で彫り上げて行きます。
和彫ができること
和彫りは、実は文様を彫るだけではありません。
キラキラしたテクスチャーや、様々な表現をしていくことが可能で、シンコーストゥディオではその可能性に色々と挑戦しています。
新しいことに挑戦していくことで、何千年も前からつながってきた技術をまた進化させて見たいと考えています。
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