近代ジュエリーは刀づくりの金工から
ジュエリーというと、西洋から来たものと大抵の人は考えていますね、でも日本のジュエリーの歴史は一味違う。
江戸時代まで、日本には刀の鍔(つば)などの刀剣装飾の金工の仕事をする職人たちが技を競っていました。それは各藩の大名達が藩の威信にかけて、パトロンとなり職人を育てていたので、世界最高峰の技術のレベルだったといえるでしょう。
ところが、明治になり廃刀令が施行されると、彼らは仕事を失い、海外輸出用の工芸品、あるいは多くはジュエリーの制作に仕事を転換していきました。
それが、日本の近代ジュエリーの始まりです。
彼らは西洋から入って来たジュエリーを、見よう見まねでつくってしまえたのです。そのとき、非常に応用が利いたのが、鏨(たがね)という工具を巧みに使ってきた、日本の金工の仕事だったように思います。
鏨(たがね)とは
「鏨」って良く耳にするけれど、なんだかあまり分からないという方が多いのではないでしょうか。
鏨の応用範囲は広く、たとえば「打ちだし」と言って、一枚の平らな板から鏨を使って形をつくっていく使い方や「彫り」などに使われます。
今回は、「彫り」の方に焦点を当て見ます。
和彫りの技法で、彫る・ダイヤの石留めをする
日本では、和彫りの職人の場合、模様の彫りいれをし、またダイヤの「彫り留」という石留めもします。
いずれの場合も、まず「鏨」の先をつくっていくことから。
「鏨」のつくり方によって、まったく仕上がりの感じが違ってきます。彫る目的や、最終的な表情を考えて「鏨」をつくる。実は、この仕事ができるかできないかで半分ぐらい出来上がりは決まってしまうと言っていいほどだといいます。
そして、彫るもの本体をヤニ付けといって、松ヤニなどのヤニ床に固定します。そこに、下絵を書き、鏨と小槌(こづち)を使って彫っていくのです。
もちろん西洋的な、こんなイニシャルと石留めも一緒にできてしまう。
ダイヤの彫り留という技法
この側面のダイヤが、彫り留で留められている。
一方「彫り留」というダイヤの石留めは、下穴を地金に開け、そこに石を落とし込んで、その周りを鏨で彫り上げます。
それが爪となってダイヤを留めていきます。
したがって、表面が平らで引っかかりがなく、しかも彫った部分が輝き、ダイヤと同一化する石留めが出来上がります。
最後は人の感性
彫りの仕事は、ジュエリー制作でも最後の最後、仕上がりのときに施されます。
しかも、やり直しはききません。
実は、日々一発勝負の、かなりリスキーな仕事ともいえます。一方で、この鏨で彫るようなきらめきは、レーザーでは彫れません。
また、切削の彫りの機械もあるようですが、人間が感性で彫っていく、深さや、ダイナミックさは、どうしても出ないでしょう。
これからの仕事は、テクノロジー+人の感性や想い。人の心が反映されないと、やはり人の心を動かすモノは出来上がらないということでしょうか。
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