2017年10月15日
若手ジュエリー・アーティストを教えたくなる 田代聖晃(たしろきよあき) 11/1(水)~14(火)新宿伊勢丹 JAPAN SENSES「JEWELRY & LIFE」
三越伊勢丹 JAPAN SENSES(センスィズ) 11/1(水)~14(火) 伊勢丹新宿店メンズ館1階=メンズアクセサリー
日本各地に息づいている、繊細な美意識や受け継がれてきた技術。
それはこの国の宝。
「JAPAN SENSES」は、そんな日本の美・技・伝統が宿ったものづくりを見つめ直し、世界に誇る感性として再発信していくプロジェクトです。
今回のテーマは「ARTISAN」。
もともと、アーティストと隔てることなく考えられていた「職人=アルチザン」は、いつのまにかその芸術性よりも、熟練した技が注目されてきました。
しかし、かれらの手仕事にある丁寧な造形やや美しい色彩には、確かにこの国の感性が宿っている.こちらの作品は当日出品できるかは不確定です
11/1(水)~14(火) 伊勢丹新宿店メンズ館1階=メンズアクセサリー売場で「JEWELRY & LIFE」と題して、Jewelry(ジュエリー)とLIFE(生活)との新しい価値を、若手ジュエリーアーティスト4人が提案します。今回、私シンコーストゥディオの米井も、企画段階からお手伝いしています。
東京を拠点に活動する、4人の若手コンテンポラリー・ジュエリーアーティストたちの作品は、本当に楽しくて、深くて、教えたくなってしまう。
【参加アーティスト】
Tsubasa Inai稲井つばさ(武蔵野美術大学卒)http://bit.ly/2fpM0hs
Satoshi Sasaki佐々木慧(武蔵野美術大学卒)http://bit.ly/2yhpZeI
Toneri Soejima副島舎人(多摩美術大学卒)http://bit.ly/2wntPyM
Kiyoaki Tashiro田代聖晃(東京藝大大学院卒)
田代聖晃 Kiyoaki Tashiro
「若手ジュエリー・アーティストを教えたくなる。」の第4回目の投稿、今回は 田代聖晃(たしろきよあき)を紹介します。(プロフィール・コンセプトは一番下に記してあります。)
コンテンポラリー・ジュエリー、つまりアートとしてのジュエリー。
この分野は、日本ではあまり認知度が無いけれど、ヨーロッパなどの先進国では、年々人気が高まっています。
その中でも、彼が面白いのは、アートの中に、日本の伝統工芸の技法を取り入れて、新たな技法を開発し、斬新な表現に挑戦しているところ。
(今回アート作品の出品は一部です)
心臓を表現した ペンダント
たとえば、この作品は、日本の伝統的な技法*「乾漆(かんしつ)」と*「研ぎ出し蒔絵(まきえ)」という漆芸の技法をヒントに新しく開発した技法使ってつくられたジュエリー。
「心臓」を表現したペンダント。
「何だろうこれ???」でいいと思います。
でも、これを身に付けてみると、ちょうど心臓のところに、この心臓のペンダントが来る。
従って、自分の心臓って「ここか!」という新しい発見があるわけです。
「私たちの存在するボーダーはどこか」というのが彼の追及しているテーマ。
内臓と言うけれど、その外と、中のボーダーはどこなのか?
私たちは、知らず知らずに、全てにボーダーをひいていないだろうか?と問題提起されている気がしてくる。
*「乾漆(かんしつ)」とは
器物などの素地 (きじ) 製作法の一つ。木,土,石膏,などの型を使って,麻布などを漆糊 (生漆に姫糊を混ぜて作る) で張り重ねて素地を作る方法。(コトバンク乾漆とはより)乾漆(かんしつ)とは
*「研ぎ出し蒔絵(まきえ)」
金粉を蒔いた後に、全体に漆を塗りかぶせ、乾燥後に表面を研磨して下の蒔絵(金粉)
制作の工程としては、発泡で造形したものにネックレスのチェーンを加工したピンで打ち止め、敷き詰めていきます。
その後、その上を日本画の顔料である白い*「胡粉」で塗り固め、チェーン一粒づつを専用の工具で削り出すという新技法を編み出しました。
この新技法を使ってこれらのジュエリーがつくりだされました。
*「胡粉」
日本画の重要な白い絵具であり、ホタテ貝殻の微粉末から作られる顔料。 日本人形(お雛様など)や能面・神社仏閣の壁画や天井画などにも用いられ続けています。
内臓を表現した ブローチ
アートで培った感性がデザインにも生かされる
一方で、今回は日々の生活でも、身につけていただけるジュエリーの提案。
彼ら若手の、コンテンポラリー・ジュエリーアーティストが、歳を重ねたアーティストよりすごいなと思うのは、アートとデザインをうまくわけて、制作ができてしまうところ。
一般の人々に向けた、デザインとしてのジュエリーでも、彼らの作品にはどこか必ずつき抜けたクリエイティビティ(独創性)を感じられるのです。
これはリング。着けたときのカタチの面白さ、置いてあるときの楽しさの両面が備わっている。
K18 リング
K18 リング
アートと伝統工芸、過去の否定と肯定
今、なぜコンテンポラリー・ジュエリーなのか?
身につけるアートが必要なのか?
たぶん、それは私なりの理解で言うならば、
過去からつながって来た、古いしきたりや因習、既成概念で苦しむ人たちを、どこかで風穴を開けていくことで救うことになるからだ。
一方で伝統工芸。
彼の様に、その時代の最先端をいく、コンテンポラリー・ジュエリーの中に、あえて過去からつながって来た伝統技法を使う。
歴史を積み重ね、引き継がれた、磨かれた技法だ。
過去への否定と肯定
この一見すると相反する動きが、実は今までの自分たちを否定しつつ、その根っこにあるアイデンティティのようなものを認めてあげる。
そこから新しい未来をつくっていこう、というメッセージのような気がしている。
政治的メッセージではなく、ジュエリーという身に着けられる「モノ」で、静かに語っていこうとを彼らはしている。
それは、無意識に、実に自然に。
それがとてもいい。
「JEWELRY & LIFE」
新しい風が吹きそうだ。
【田代聖晃 Kiyoaki Tashiro】
1988年生まれ。
東京藝大大学院卒。在学中より国際的な賞を受賞。
一方で若手のためのシェアアトリエ「Atelier TOCOHA」を立ち上げている。
精力的に国内外でアーティスト活動展開中。
http://www.kiyoaki-tashiro.com/
【田代聖明の作品コンセプト】
『私たちの存在するボーダーはどこか。
原子、分子、細胞、星、銀河、言葉は違くとも本質は同じであると考えています。
星は原子であり、細胞は銀河である。
私の作品はその不確かな「単位」を極小の粒の集合体で表現し、細胞や器官、臓器、などの人の内部に内包されているモノを外側に引っ張り出し装身具として身にまとうことで、人のいう”世界”の中での私たちの立ち位置を改めて考えさせるという試みを目的としています。』
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