今日は本当にいいミーティングであった。
シンコーストゥディオというコレクションの新たな旅立ちになるかもしれない。
ずっと考えていた。
なぜ、日本のジュエリーにはアーティスティックな感性が宿らないのか?なぜ創れないのか?そしてそれを創り上げるときのチームワークは?
今日、集まったのは、ドイツを拠点にコンテンポラリー・ジュエリーアーティストとして長く仕事をしている西林佳寿子、若手クラフトマンの旗手石井貴士、デザイナー石有里(シンコーストゥディオ)、そしてディレクションをしている私、そして忘れていけないのは、クラフトマン石井の6ヶ月のお嬢さん「たまちゃん。」
今まで、「ジュエリーデザイナーという人がデザインをする。そのデザイン画に基づいてクラフトマンが造る。そして市場で売る。」ということになっていたけれど、私はずっとそのやり方ではきっといい物は生まれてこないだろうと考えていた。
まず、ディレクター側がブランディングからターゲットとする顧客に合わせて、どんなものを造っていくかを提案する。本当に世の中に必要とされているものなのか?これを身につけることで、人を幸福に導けるのか?
一方で、アーティストは、なかなか人々が感じられないような感性で、新しいデザインを提案していく。
そこに、製作段階からクラフトマンが関わることによって、技術的にできること、できないことがわかってくる。また、新しい技術的な挑戦をすることが可能になる。
ここで大切なのがデザイナーの役割である。
概して、アーティスト、クラフトマンは消費者と直接触れることが少なく、デザイナーが入ることによって、現実の人が求めるものに近づけることができる。デザイナーが意見する、実際の金の重さや価格帯をにらんで、消費者が買いやすい、本当に欲しいものに変形させる。
この形を、おそらくずっと、ずっと・・・考えていた。
今日のディスカッションは皆が色々なアイデアを持ち寄り、意見を言い合い。実に4時間にも及んだ。
わずかな、傾きや、方向性の違いから見えるハッと感。それを議論し、線の0.1mmの太さにさまざまな意見が出る。効果的に見せるために、隠れた仕掛けや、ダイヤモンドの留め方。ちょっとした角のラインどりまで。
西林は「ジュエリーこそは、どこから見ても面白い。違う方向から見るときに、また違った発見ができる。それが面白い。」のだという。
今回のペンダント、ピアスはそんなハッとする仕掛けが満載された。
そして、もう1つ。石井は4月から奥さんが育児休暇が明けて、子供を見ながらクラフトマンとして頑張っている。今回は子連れミーティング。
けれど、仕事の話には全く妥協がない。
全員が、すごくとがったものを創ってやろうという意気込みが見える。
そして、ジュエリーを身につける女性の多くが、子育てを経験しているのだと思うと、こういうミーティングが実はとても自然でしなやかな気がしている。
最後に、この「たまちゃん」が大きくなっているころに、私たちのジュエリーははたして生き残っているだろうか、いやきっと生き残ると思う。
それは決して、造る側の自己満足ではなく、最終的に身につける方の人生が、孤独な日々の鍛錬と創造力で出来上がったジュエリーでこそ本当の意味で人々の気持ちを救うということが、ジュエリーの最大の役割であるということを考えなければいけない。いつも心している。
このシンコーストゥディオ by 西林佳寿子 のコレクションは5月末に発表されます。
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