つや消しも色々あります
シンコーストゥディオのジュエリーは、様々なつや消しが入っているものが多いのです。
正確に言うと、つや消しというより、様々なテクスチャー=細かい模様です。
このリング(Yoi-No-Myojo[宵明星])のつや消しは、「ホーニング」といって、ガーネットの細かな粉などを吹き付ける。その粗さも色々で、その大小で雰囲気も変わります。いずれにしろ、まず究極に磨く→つや消しや、テクスチャーをつけるという作業です。
このリングも、上面はホーニング側面は鏡面とそのコントラストが醍醐味です。
このホーニングは、ふわっとしていて柔らかい雰囲気ですが、長く身につけていると、特にリングの下の方は磨かれてつるつるになりやすいのです。(仕上げなおしすれば直ります。)このホーニングが技巧的に難しいとしたら、それはむしろ「マスキング」と呼ばれる、鏡面に残したいところを筆で吹きつけがあたらないように保護する工程でしょう。
たとえば、Choju-Giga[鳥獣戯画-兎]のシルバーチャーム。耳だけが光っているのわかりますか?これはそれ以外のところをすべて筆でマニュキュアのようなマスキング液で覆って、そこに吹き付けて、表面を荒らしてあるのです。
こういう細かい立体だと、マスキング作業の方がよっぽど手間がかかって、大変なのです。でも、そのコントラストがいいのです。それが金属の質感の表現であり、微妙な感性が必要なのではないでしょうか?
テクスチャー-模様 をつける
こちらは「Hisho[飛翔]」という名前がついているリング。ふわっとしたリングの表面の雰囲気は、羽の羽毛のイメージ。
これは、クラフトマンと対話しながら色々な表面の模様を試行錯誤して作りあげたものです。
こういうテクスチャーを思いつくには、クラフトマンが休みの隙間時間などに、色々試してみる余裕や情熱がないとハっとするテクスチャーにはたどり着きません。
このテクスチャーは、上のリングの吹きつけで荒らすのとは違って、もっと深く金属に加工を施すので、なかなか表面のつや消しは取れずらい。かなりもつと思います。
つや消しやテクスチャーこそ日本の仕事文化
日本には、本来、鏨(たがね)や和彫りなどによって、金属なんだけれどもまるで布地のように見せる、様々な技法がありました。鏨とは金属を加工するための鋼(はがね)でできた道具です。
この鏨、種類はたくさんあって、さらに職人は彫るものによって、その先端を自分で作るところからが仕事。
そして金属にテクスチャーや彫りをつける技法こそ、日本のデザインの真骨頂であり、むしろ昨今ヨーロッパで生まれてきた、コンテンポラリーなアートジュエリーとも共通するような気がするのです。本当は日本のお家芸のはずなのに。そのことを、ほとんどのジュエリー関係者は知らないし、ましてや一般の方たちも知らない。だからこんなブログを書いています。
金属を布地のように感じる
たとえばこの「Oribe[織部]のリングは、側面の鏡面と表面の交差した線が全体を引き締めています。
すっと私のジュエリーの造りの師である、職人は言います。
「金属は布地のように表現できる。」
それでいて、さらにできれば色も感じられるように」という教えでした。
いまだなかなかその境地にはいけないのですが。ふと、その言葉を感じています。
それは日本の伝統の金工の仕事から来ているのです。刀の鍔(つば)や装飾のは、様々な技巧的且つ美しいテクスチャーが施されてきました。清水三年坂美術館
日本固有の金属の色の出し方「色金」に関してはまた別に述べます。
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