刻印を彫る 日本のジュエリーを支える職人

リングの内側に「刻印」が打ってあります。

どうやって打っているかご存じですか?
実は、刻印を彫る職人さんがいて、鋼(はがね)に一点一点鏨(たがね)を使用し手で彫っているのです。
それを、リングの造りの職人が、精神統一して一気に打ち込む。

刻印職人さんの中でも伊藤さんはとても有名。
今はレーザー刻印も増えていますが、手で打刻する刻印はまた格別。
名だたる有名な日本のブランドは皆、この方のお世話になっているはずです。
今から5~6年前、造りの職人の坂元さんを通じて紹介いただきました。


電話すると
「浅草のよ!ウンコビルのすぐ下だからよっ!」
江戸っこなまりの、落語にでてきそうな会話。
ちなみに「ウンコビル」はアサヒビールのビルのことです。

仕事場に伺うと、まず座布団が出てきます。
そこで伊藤さんと向き合いながらお話をする。
少なくても1時間、ひどいときは夜の9時近くまで話していたこともありました。
それがまた、話しが面白い。
現在の業界の動向から始まって、テレビや芸能に至るまで、怖ろしいほどの新鮮な情報と知識を持っています。

伊藤さんの家系は元々江戸時代は、水戸家お抱えの鍔(つば)職人だった。
明治維新以降、廃刀令などで仕事に不安を覚えたのでしょうか、曾祖父の大二郎さんはなんとイタリアに単身留学。
刻印技術を学び「伊藤彫刻」を開いたそうです。
明治時代にイタリアまで修行に行くなんて、創造を絶する困難があっただろうと思われます。
その後、多くの弟子を育て、刻印の仕事になってからはすでに4代目です。

伊藤さんの仕事が素晴らしいのは0.2mmまでのところに刻印を彫り入れていくこと。
この細かさは、機械では無理なのです。
シンコーストゥディオの刻印も1.5mmの中に、細かい竹の筋や版画を模したギザギザなどが無くてはなりません。
人の能力の素晴らしさを感じます。

私は伊藤さんが江戸っ子の重要無形文化財だと思っています。
仕事、おしゃべり、生活すべてが、絵をかいたような江戸っ子の職人。
江戸の大工だった祖父を思い出し、懐かしくもあり、尊敬の念を抱いています。

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